「魔力の胎動」東野圭吾著 感想:「ラプラスの魔女」のスピンオフとして別物として楽しもう

東野圭吾さんの最新作「魔力の胎動」を読了したので簡単に感想を。
(ネタバレどころか、あらすじもない本当の感想ですわ)


まずは自分のバカさ九流ぶりから披露すると『胎動』を思いっきり『しどう』って読んでましたけどね!!

”魔力が生まれ出す(→始動)”か~、ってね。ま、意味的には近いんですが(近くない近くない)


一章から五章まであり、最後の五章がタイトル『魔力の胎動』


映画化される「ラプラスの魔女」と同じ設定ですが、一章から四章までが連作で、五章だけが別作品になっています。


四章までが連載の作品で、五章が書き下ろしなので、実際の作品は四章まで、「ラプラスの魔女」の映画化と公開に合わせて五章を追加したって感じでしょうか。

帯の”「ラプラスの魔女」前日譚”という意味では第五章だけかなー、という感じです。もちろん、羽原円華の活躍っていう意味では本全部なんですけど、四章までと五章は別物なんでねー。


「ラプラスの魔女」が好きな方には羽原円華のキャラを楽しむ短編連作集として捉えると楽しめるかと思います。


青江修介が好きな人は第五章しか出てこないので、ちょっと期待はずれかもしれませんね。
(反対に第五章は羽原円華がほぼ出てこない)


主役は工藤ナユタという人物です。

スピンオフとして世界は同じだが、別物として楽しむのが一番です。






一章から四章は羽原円華(広瀬すず)と、工藤ナユタが主役。

五章は、青江修介(櫻井翔)が主役です。

五章はまさしく「ラプラスの魔女」につながる前日譚。なので、帯にある前日譚という意味では五章かなーと。

四章までは羽原円華の別物語って感じですね。


五章の「魔力の胎動」は本当にラプラスの魔女へのおまけなので、先に読んでも後に読んでも大丈夫です。

単独ではやはりボリュームが少ないので満足度は少ないです。「ラプラスの魔女」と合わせてひとつって考えるものかなと思います。



一章から四章までの工藤ナユタの物語は面白かったです。
(工藤ナユタが主役でサブが羽原円華なので、本当に「ラプラスの魔女」のサイドストーリー)


第一章「あの風に向かって翔べ」が人間ドラマ的にもベタですがグッときますし、話のテンポも楽しく導入にふさわしい話でした。

第二章「この手で魔球を」は第一章と似た感じの話です。
どちらも工藤ナユタをキックとして羽原円華が活躍するといった話。それには人間ドラマがあるよ。といった内容ですね。こちらが二章なので一章よりは感じが入りませんでしたが、もし、一章と二章の順番が逆ならこっちのほうがいいと思ったかもしれません。


第三章「その流れの行方は」になると、第一章・第二章である程度工藤ナユタの人物像を読者に確定させた後にナユタの過去を織り交ぜることで単なる事件だけでなくナユタ自体への興味を深くしています。

内容自体は「人魚の眠る家」で投げかけた障害児の子供を育てるといった視点も出ていますが、基本は一章と二章と同じく事件を工藤ナユタと羽原円華が組んで(?)事件を解決するといった内容です。


で、第一章から第三章までで、工藤ナユタという人物の輪郭をわかったところで最後の章に移ります。
「どの道で迷っていようとも」

タイトル通りナユタの過去の苦しみを事件をとうして映し出していく。
工藤ナユタと羽原円華がいいコンビなので、これ以外でも続くのかな、と思わせていましたが、四章のラストまで読んで、これはこれで終わりなんだということを感じました。


ラストは良かったです。
意外性は強くないんですが、工藤ナユタの葛藤がうまく最後に昇華されていくといったきれいに終わった小説でした。(五章は別作品としての認識)

本当の短編集であり、「ラプラスの魔女」のスピンオフ小説。


これだけでもドラマか映画化されそうな感じです。(が、ラプラスの魔女が櫻井翔が主役なので難しいかな)


「ラプラスの魔女」が気に入ってもいらなくても軽く読めるので興味あれば一読するのもいいかと。


あ、もちろん(?)「ラプラスの魔女」の映画も見に行きますよー。
実は古くからの東野圭吾ファンですので…。

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